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洞窟ホームレス株式会社VSFXマルチ商法詐欺

洞窟ホームレス株式会社VSFXマルチ商法詐欺

文章のみの4クルー目の18

工事着工)
計画図は河川のそばの名所の活かし方にも触れた。 隅櫓のところには覗くと大手門が再現される透明な大きなパネルを三角の公園の場所に配置し、埋もれた名所に『いっしょに撮影できる』ようなタイガーバームガーデンような『コンクリートの人物オブジェ』を配置した。

工事の前に、林太郎さんが「橋姫」におまいりに行こうと言った。 広瀬橋をかけるときに人柱になったという伝説の姫の祠だ。 「え、だれがひとばしらになるの?」と タカハシさんが誤解してあわてたので、みんなで笑った。 祠に行った後に、桃花で焼肉を食べて帰った。
運搬)
運搬は洞窟のある越路だと目立つので、船かカヌーで移動できないかということになった。しかし、案外と重量が積めそうもないので、トラックで、水力発電の取水口のある追廻のほうまで運んだ。当初はここを倉庫にして、タカハシさんの自宅で精製をしていたが、後に洞窟のほうでやることになり、必要な分だけを、そこからリヤカーをつけた原付バイクを洞窟の水路を走らせ移動させた。
「くっそーぉ!」 タカハシさんさけぶ。

静寂)
公園の計画やパネルはニュースにならなかった。すごいいたずらだとおさわぎになることを半ば期待していたのに残念な気持ちもあった。まだ、気付いていないと いうことだろうけど、河川工事のあとはだんだん川の水で流されて、モトのようになってしまって、パネルだけがそこに残っている。
仙台市民というのは広瀬川広瀬川というくせに、案外と川をみていないのだな、と思った。おまけに、この場所にひとが押し寄せるのは、芋煮会のシーズンつまり秋口から11月初旬までなので、この時期はひとが来ないのだなぁと思った。
リョウさん「昔や、八木山橋の下の辰口を小学生の時分さ、みんなで探検してたらや、橋の下にマネキンあってやぁ」
リンちゃん「あそこ、自殺の名所だったんでしょ」
リョウさん 「最初、見て、みんなでびっくりしたんだけどや、橋の上から見えないから、上から50メートルくらいあるべ、そこから見えるところに移動したのっしゃ」
コハルがアツシを見た。アツシが笑っている。笑うようになったことさえ、気付いてないみたいで、それがおかしくって、コハルは大笑いした。 「これって、そんなにおかしいか?」と林太郎さんが言った。
リンちゃんが「箸がころげてもおかしい」と言った。 「はは、橋だけに」とタカハシさんが言ったけど、 意味がわからなくてみんなちょっとキョトンとした。
リンちゃん「そしたら」
リョウさん「そしたら、新聞に載ったんだおん」 また、みんなで笑った。




精製)
金を精製したのはタカハシさんだ。
精製方法については、まずはネットで検索して日本金属学会の:金属博物館に行った。そうしたら、すでに平成15年で閉鎖していたので、:金属博物館に林太郎さんに柳川庄八の講談の本をプレゼントしてくれたN先生がおられたことがわかったので、訊ねた。その後、東北大学金属材料研究所にタカハシさん、林太郎さん、アツシが通って質問を続けた。
伊達政宗にまつわり、N先生によればこんな話もあった。
「福島県伊達郡は平泉藤原氏の有力な家来信夫佐藤庄司の居住地で、源頼朝の平泉攻め
の時に主戦場になり、軍功のあった伊達家の先祖中村朝宗が伊達郡に領地をえたのが
伊達初代です。戦国時代が終わると本来の領地だった信夫・伊達・山形県長井(米沢
市)を没収され岩出山、仙台に移されましたが、伊達郡の金山には未練があったようで
伊達郡に領土をもらった蒲生・上杉に取られまいと水没させた鉱山の伝説があります。」
この金山もどんな経緯で廃坑されたのかと思った。そうか、東北地方は「平泉の黄金文化」に象徴されるようにもともと、産金の盛んな地域じゃないか…。みんなの顔に光がさした。

研究としては、みんなで、宮城の松保土鉱山をめざしたが、発見できなかった。
リョウさん、リンちゃんとで、岩手の田老鉱山に行き、ここは金が掘れたわけでないということがわかり、その足で、土畑鉱山に行った。そこでは、廃墟フリークというか、心霊好きの男性にあった。霊は薄暗く湿り気に集まりやすいし、ほとんどの鉱山に人の死が過去にあるからおもしろいそうだ。仙台の洞窟(「青葉電気工業発電所」)の話をしたが、経営上の理由で廃墟となった建物には関心がないと言われた。

タカハシさんと、林太郎さんは山形の福舟鉱山に行った。廃坑と思いきや、数名で発掘されていたので、そこでかなりのノウハウを得ることができた。標本をもらった。タカハシさんは「鉱山には崩落崩壊事故、火災事故、毒物による事故があったけど、戦時中は、おもに朝鮮半島や中国の人を強制的に連行して、強制労働させていたことなどもあって、過酷な労働や虐待により亡くなってしまった人も数多い。」と力説していた。

コハルとアツシ、ショウタは宮城県の大谷鉱山に行ったが廃墟だった。「太谷鉱山の沿革」というパネルの前や廃墟の前で写真を撮ってきた。後日写真をみんなで見て「ここ(洞窟株式会社に)似てない?」と言って笑った。
ヌマさんは単独で、福島の高玉(たかだま)鉱山に行ったが、発見できなかった。仙台に帰ってきて調べたら、観光鉱山になっているというので、「また行く」と言ってそのままになっている。肉眼金鉱石が展示されているらしい。

精製の器械の材料は、幸いにも、片平や星稜町の東北大のゴミ捨て場にあった。
高熱を出すマントルなんとかという機械も大量に捨てられていて、それをほとんど改良することなく精製する機械をつくることができた。
見つけたのは銅や鉛などの精製過程における副産物ではなく、自然金だ。おまけに、鉱床が浸食されて、金は砂金として広瀬川に流され、川の流れのせいで、比重が大きいために沈殿していると自然が精製過程を手伝っていた。いわゆる「わんかけ法」という、比重の違いを利用して水と砂の混ざった状態の金を、おわん状の器の中でゆり動かして選別というのがここで自然に行われていたことになる。
その当時、みんなは「金」のことを、元素記号がAuなので、「エーユー、エーユー」と呼んでいた。
最初はタカハシさんの県営住宅で作業をおこなっていたが、1週間たつと警察が訪ねて来た。
県営住宅のそばで、大麻の栽培を自宅でしていた人間がいたらしい。輸入された、ボールペンの飾りとして入っていた大麻の種を、ボールペンを壊して取り出し、栽培したらしい。大量に電気をつかうため、ほとんど電気を使うことのなかったタカハシさんの消費電力がはねあがったことが疑われたらしい。警官はくんくんとタカハシさんの家の匂いをかいでいった。なにやら、大麻の栽培をするとフルーティな匂いがするらしい。タカハシさんと「フルーティ」、似合わないキーワードだったので、ハーブとか栽培した方がいいかもとかリンちゃんに言われていた。

発電)
洞窟での発電は、最初は愛宕神社からの盗電、次に夜店で使うような、ガソリンで発電するもの、その次がソーラーパネルとなって、空調が入って快適になった。
(ちなみに、ソーラパネルが設置される前の愛宕神社からの盗電の電気代については、お賽銭箱にそれなりの金額を入れていた。)

しかし、精製に、タカハシさんの使った電気代は10万円。それも、試用的に動かしていたのだから、家庭や事務所でまかなえる電気量ではなかった。

今考えれば、今まで精製のできたものをカネに変えて、それで空き工場を借りればよかったのだが、なにしろ当時の林太郎さんたちは、そうしたあたりまえのことが思いつかなかった。というより、いかにカネをかけないでやりとげるかに生きがいを感じていたところがあった。
タカハシさんが、洞窟に放置されていた発電の機械を使えないのか「研究してみます」と言い出し、部品を同じ拾い屋(彼は拾い屋とは言っても、ネットで販売していた)のヘンミさんという知り合いから部品を調達し、ものの6日で発電機をつくってしまった。
その前に、三居沢の水力博物館に展示してある昔の発電機を拝借できないかということになり、そこは管理者が1名なので、その1名が2階に行った時に運び出す寸断をつけ、追廻のホームレス5人とコハルを除いた6人で出かけ、サッカーチームのように11人で現場に行った。ところが、いざケースをあけ、それを持ち上げると、なんと異状に軽い。
すぐにわかったのは、それが確実にレプリカだということだった。
おそらく、展示を見ている人はわからないと思う。わざわざレプリカにこのケース保護はどうしたものかと思ったが、これは持ち上げたものしかわからないことだ。

そこで、川内の取水口から先の水路を広げ、この水力発電施設に広瀬川の水を引き入れさえすれば、十分な電力は供給できるようになるのだ。

大逆転
水引)
川内の取水口から、発電機まで水を引く際に、水量のチェックをしなければならなかった。
スイ道の掃除のためにつくった取水口までの川の支流を復活させ、そこで、川内の取水口から水を一斉に3分間流し、トンネルの中の水量を3ケ所でたしかめなければならなかった。
トンネルの中の2ケ所は携帯の電波がとどかなったので、どうしようかと思ったときに、リンちゃんが、言った。
「天狗のお力をかりるんじゃな」。
みんな、「てんぐー」と言った。
リンちゃん「つまり、愛宕神社のカネだよ」
みんな、「おさいせんー?」と言った。
リンちゃん「愛宕神社の寺の鐘だよ。ごーん、ごーんての」
みんな、「あー」
愛宕神社には大きな天狗が2体山門として祭られているのだ。
ヌマさん「鐘あるの、となりのお寺ですよ」
林太郎さん「虚空蔵尊大満寺ね。向山の早鐘だよ。はやがね。そこなら、この上だからちょうどこのトンネル内に鳴りひびくよ」

というわけで、水をヌマさんが流すや、携帯でリョウさんに連絡、リョウさんが鐘を鳴らして、トンネル内のアツシと林太郎さん、リンちゃんが鐘の音からの時間を計った。発電機のところにはタカハシさんがはりついた。実験の前には、みんなで、天狗を観に行った。
実験はうまくいったが、あとで、これって、時間を決めて一斉にやればよかったんじゃないか?という話になったが、仙台の地名の由来となったといわれている千体仏が安置されて大満寺の鐘だから、きっとご利益あるよ、ということで「それもあるかな」ということになった。
ちなみに、リンちゃんは愛宕山からの仙台の夜景をアツシとけっこう見に行っていることがあとでわかった。(つきあってんのか?)
※大満寺が青葉山にあったころ、ここに築城した国分氏が千躰城とし、その後、仙台と改められたといわれている。天狗は、山門右は大天狗、左は烏天狗でいずれも日本最大。


水路のテスト)

一斉に水を流すテストを3分した。向山の早鐘を使った。
水が流れ込むとき、ドドドドという音が怖かった。ズイ道のな
かにいるひとは死ぬかと思ったとか。
ズイ道の中のリンちゃん
ドーンと大音響 逃げるリンちゃん


テストは成功。発電は十分で、電力を売るか?とか言った。

金塊)

8000万円の金塊と言われてもイメージできないと思う。それほど、体積をとるものではないが、重さのせいもあり、300くらいの塊に分けられて、洞窟の一番奥の浸水してそこから歩けない場所のところに、新聞につつまれて保管された。
ときおり、名古屋のシャチホコの話が出た。「あれって、6.6キロのメッキらしいよ」という話、と、リョウさんが昔箱根あたりに行ったところに純金の風呂っていう電柱宣伝がたくさんあったという話だった。伊豆の船原ホテルだと思う。ここにはホントの金塊がある。不思議だった。

みんなで金のことは調べた。オーストラリア、ビクトリアにある金鉱山の入り口が洞窟の入り口に似ているので笑った。日本では昔は、多く金が産出したらしい。マルコ・ポーロの東方見聞録でも、「黄金の国」と呼ばれているのはそのせいらしい。「奈良の大仏」も金箔が施されていたらしい。大仏殿が焼き討ちにあい剥がれてしまったということだ。
24K-GPとあるGPというのはメッキだということや、仙台の金の買取業者などを調査した。コハルが歯科衛生士という設定で、金の塊を歯の大きさくらい持込、買い取れることはわかった
そのお金で、林太郎さん、タカハシさん、リンちゃん、アツシ、コハル、ヌマさん、リョウさんで河原町の桃花で焼肉の食べ放題をやってお祝いした。みんなで河原町の桃花から歩いて、昔の街道に沿って、仙台の中心街芭蕉の辻までを酔っ払いの歌をうたいながら歩いた
魚屋だったけど結婚式場という洋館作りのたてもの。金毘羅さま。プレイボーイの有原業平の塚。絶世の美女の遊女高尾の墓。映画「非バランス」で出た、大日如来。かかえきれないほどでかい薬缶(ヤカン)を飾っている田善銅器店。活版印刷の会社のあと。リンちゃんが説明しつつのミニツアーをした。

8000万円)
金額は8000万円になった。
売買の手はずは遠藤がやった。日本ではなく、中国にということらしい。
金額については、遠藤がそう言ったということなので、ほんとかどうかはわからない。
洞窟に届けられたのはその半額の4000万円だった。遠藤の言うには「半分は当然の権利でしょ」というのだった。「(お金を)どこに置きますか?」などと、遠藤はやけに愛想がよかった。
しかし、その後、遠藤が、「ヤマちゃん」と呼んでいる友人らしき60歳くらいの男性と、洞窟を訪れた。そして、コハルに「林太郎さんに言われて」と言って、残りも持って行ってしまった。おそらく、「ヤマちゃん」というのはパチンコの機械を販売しているとかいう人物だと思う。林太郎さんとアツシが遠藤の住んでいるというアパートを訪ねたが、そこは引っ越された後だった。近所に聞いたが、交流自体もなく、遠藤は自分のマンションを手放してからひっそりとそのアパートで目立たないように生活していたようだった。
遠藤が毎日のように居座っていたコーヒー店にも1週間前から来ていないという。ヤマちゃんともここで逢っていたらしく、現金を渡したのが2週間前だから、その1週間にそのヤマちゃんという知り合いに知恵をつけられ、姿をくらましたとは容易に想像ができた。

取り戻し)
取り戻しはあっけなかった。タカハシさんが、遠藤の家のひっこしのときのゴミを捕獲していた。そこに、娘さんの住所があり、すぐに引っ越し先がわかった。
娘さんに連絡をつける前には、遠藤の弟に電話をかけたら、タイにつながった。飲食店をやっていた10年以上逢っていないということだったが、仙台で郵政詐欺に2000万円あったのでということで、300万円を6ケ月前に送ったと言っていた。

「ほんとは、2000万円ではなく、1000万円のはずなのにセコイことだぁ」とリョウさんが言った。「しかし、半年前の300万円がまた消えてたってことだから、遠藤はかなりやばいところから金をかりているんじゃないか?」という結論になった。
残念ながら、戻ったのは3500万円になってしまった。
「あとは知らない」と遠藤は言い張って、このことを税務署に言うと大声を出し、結局そのままいいからということで、お金を持ち帰った。
経費をさしひき3000万円くらいが手元に残った。
もっと、遠藤を追及すべきだと林太郎さんにリョウさんは詰め寄った。
林太郎さんは、こうした一連は、悪いものに近寄ったからこそ起こったもののような気がする、と言った。つまり、もう汚いものを遠ざけてしまったほうがよほどトクだと。

コハル「前にいい働き方で得たお金は赤くて、悪い働き方で得たお金は白いとかっていう話があったじゃない。今回のお金はなに色なんだろ」


解散)
テレビ局の取材がここに入る気配があった。入り口の扉がしまっているので、あきらめて帰ったが、そばをクルーがうろうろしていた。※
おそらく、近日取材が入りそうだった。あるいは、伊坂幸太郎の映画にでも使われるのだろうか?いずれにせよ、ここに会社をおいておくことができない環境になったのは確かだった。
また、お金も、ただ、ここに置いてても、あぶないから、分けようということになった。
ぴったし7人で均等にだ。

※ これは後日談がある。実は、テレビの取材が入ったのは事実だが、このときに来ていたのは仙台の地元の郷土史の機関紙を出していたスタッフ(女性3人)が広瀬川の取材としてエゾ穴を確かめに来ていたのだった。ところが、外に、タカハシさんの濡れた靴を干していたために、ここに浮浪者が住んでいると思って、ちょっと中を覗いて、怖くて近寄らずに早々にひきあげたらしい。ところが、そのあと地元の郷土史の機関紙の別項でこの青葉電気工業発電所をとりあげた。その後、時期を同じくしてテレビの取材が入りなどし、この前の樹木が取り払われ、中のものがかたづけられたということだ。(話では、ここは愛宕神社の土地らしい)




リンちゃん「リョウさん。あたしはね。『さよなら』って苦手なんだよ。クラス会とかでもさ、最後に残るのやだから途中で帰るんだ。途中でひと抜けていくじゃない。ほんとは、相手の服の袖を持って『帰っちゃやだ』って言いたいんだけど、笑ってバイバイっていうの」
林太郎さん「そんなものじゃないんだよ」
「これで、解散ってわけすか」リョウさんが林太郎さんに言った。
林太郎さん「いや、解散はしない。」
リョウさん「もう、いいんでねのすか?一応のカネはつかんだんだべしや、小学生じゃないんだからや、こんな洞窟で秘密基地ごっこなんてやってられねべした、いつまでも」
林太郎「いや、それもありなんだけどね。大人にはなりたくないでもいいんだけどさ。そうじゃなく、僕たちは弱いってことなんだよ」
リョウさん「弱い?」
林太郎「いわゆる、勝ち組、負け組っていうくくりなら、負け組だろ」
リョウさん「んだか。でも、勝ち組って何だべ?公務員か?医者とか銀行員とか?すか?」
ヌマさん「弁護士とか?」
林太郎「まあ、いろいろあると思うんだけど、僕たちは負け組ってくくられるけど、ホントは組なんかじゃないよね」
ヌマさん「…」
林太郎「たいていは、個別にかつかつで、明日に不安をもちながら、歩いている。バラバラになんとか生きてんだよ。組っていうかさ、集まってなんかいないんだよ。集まる経済的な余裕も、精神的な余裕もない。見ているのは『背中』ばっかりだ」
ヌマさん「…」
タカハシさん「でも、勝ち組は集まってんだよ。ヒルズで、ホテルの鳳凰の間で、政治家のパーティで、ゴルフ場で」タカハシさんが言葉を継いだ。
林太郎「だから、僕たちははなれちゃいけないんだ。それを期待するっていうんじゃないけど、もしかすると、今後だれかが成功するかもしれない。それで救われることもあるだろし、いろんなことを打ち明けたり、助け合うこともできるだろ。すがるんじゃなく。僕たちは、バラバラで戦ってはダメなんだよ。それは、強いやつの思う壺さ。ひとりぼっちでいたら、絶対負ける。」


一矢報いる)

「アルファ」に対して一矢報いることは考えなかったのか?というと、
考えなかったわけではない。
しかし、つきつめていくと、それは警察の「お仕事」なのだ。
警察の仕事、検察の仕事、裁判官の仕事とあって、刑務所の仕事になる。
そして、それは国税でまかなわれ、それぞれの職務にある人々には十分な老後の福利厚生もある。
ということで、警察、検察、裁判所はそれで高い給与を税金でもらっているんだから、自分の「本来の」仕事をやってくれればいいのだ。
市民は、お願いするしかないじゃないか?



「アルファ」の中核に切り込んでいくような位置には間島社長は立っていないし、どうも間島社長は学校生活の「パシリ」のように、花田にいいように使われているだけのような感じもあった。

「アルファ」で迷惑を受けたのは詐欺を受けた被害者たちだ。
なかには、数人が自殺をしているらしい。
それを警察は早くも2年以上もかけてまだ逮捕できていない。
名探偵コナンのように30分で解決しろとは言わないが、どんだけ時間をかけているんだ?
そして、その手の話しになると、きまって言うのは「通常、強制捜査から2年前後で決着つく」というお役所の「前例主義」だ。「下手に、『これ』を早くやってしまうと、次からがきつく」なると、手を抜く。営業ノルマと手を抜く営業マンの構図と似てはいないか?

逆に、モトさんや林太郎さんへの、税務署や、警察からの書類提出は面倒で、おまけにその担当者はそれを手伝うでもなくただ電話一本指示するだけだ。
おまけに、なんでこんなに偉そうなのか?と疑問を感じる態度だ。
林太郎さんにとっては実質的に迷惑だったのは、そうしただらけた捜査体制から行き当たりばったりに提出を求められる書類だった。

「アルファ」におとづれ、中国人の漢とあったときに立ち会っていた60くらいのおじさんがいたが、モトさんと経理の引継ぎの時に、前任の経理担当者から聞いた話では、それは警察のOBだという。
また、間島の会社に強制捜査に入ったあと、間島社長とあったときに、強制捜査のときには、宮城県警が花田の未編集のDVDを持っていかなく、間島社長の話し振りでは、そのなかには「詐欺」を立件できるような内容もありそうだった。
それを、今、林太郎さんが、間島社長を訪ね、だますようにして入手し警察にひきわたすようなことをしても、もともとそんなことは警察がちゃんと強制捜査のときにやればよかったことの尻拭いだ。
公安委員会に行ったOBのために、また予算組みされているので自分たち警察のために、そんな道端で隠れて「ねずみとり」をしている『暇』や、警察OBへの「過度の表敬挨拶」をしている『暇』があるのなら、きちんと本来の仕事をやればいいだけの話だ。

大団円的には「アルファ」をだまして被害者の金をとりもどし、それを、それこそFXで増やして被害者に返すという映画みたいな結末もなくもないんだろうが、「アルファ」をだましてというような(まるで「クロサギ」のような)スキームのひとつも考え付くわけもない。

では、なにももって「VS」バーサスなのだ?と思った。
洞窟ホームレス株式会社VSFXマルチ商法詐欺 とはいったいなにか?

思うに、「VS」とは「それを離れ、別なところで成功をする」ということでしかないと思う。
「8暗い低次元な意識から離れること」だ。バトルは はなれることと、別なところで成功することだと林太郎さんは思った。実際、「MLM詐欺会社」から金を奪い返すとか、
ぶんどるとかしても、それは汚い金の色だろう。その金を被害者ならいざしらず第三者が握ったら、悪いものを招くだろうと。関わらないというのが、勝ちだ。
実際、バトレるのは、被害者(民事)か警察(刑事)しかないだろう。
ああ、似たような話があった。
「自分を捨てたオトコに対する復讐は、他のオトコと幸せになること」だと。

結局、「アルファ」の結論はまだ出ずにいる。

タカハシさんの趣味の警察ネズミ捕り現場コレクションは増える一方だし、コハルの事件でもあったが、警察はあいかわらず刑事事件になるようなものでもまともに話を聞いてくれずに言い続けるのだ「これはぁ、民事事件にも関わるの、警察の仕事じゃないなぁ。弁護士に相談してください。。。」と。今回の「アルファ」も被害届のにぎりつぶしが、事件の発見を遅くしたのは事実だ。

「アルファ」の詐欺師たちが逮捕となれば、また、モトさんにも調査の依頼が来るのだろう。しかし、いったい警察はいつまでだらだらやっているのかと思うだけだ。やはり、お役所なのかな?

さて、たまたま林太郎さんはまちでミラーボールをひろった。
そこで、警察にとどけに行った日、警官がパソコンをひろげて「ソリティア」(トランプのゲーム)をしていた。
「はぁ~。まったく、なにをやっているんだか。。。」だ。





洞窟の閉鎖)

「解散はしない」と言ったものの、そ の10日後にテレビ局の取材がここに入った、水力発電跡ということで、夕方の番組に紹介され、ドアの前の樹木は切り払われ、雑誌の取材クルーが来るようになった。そこで、みんなはここを一旦撤退することにし、大事なものだけを持ってここを離れた。

ぼくたちは、この場所を分かち合えたことを胸に刻もう
聞いて欲しい話があるときは、メールをくれ。すぐに逢おう。
いったん、ここで散るけど、いつかこの場所は取り戻そう


1ケ月後、ここを訪れると、荷物が全てなくなっていた。よく見ると、カフェを抜けて暗い暗い洞窟につながって行く通路にまとめて捨てられていた。

NOW&THEN
洞窟の今)
洞窟はその後しばらくしておそらく近所の住民によって閉じられた。上からのぞくとなにもないので、すっかりかたずけられたのかもしれない。
もったいない、そのまま活かせばいいものをと思ったが、まあ、言う権利はない。

ヌマさんは異業種交流会のビジネスをはじめた。東京での開催ばかりなので、ほとんど仙台にはいなかったが、東京で営業をやってくれるひとみつけてからは、仙台にいることも多くなったようだ。
月に1回の洞窟株式会社の継続事業の相談会はあいかわらず、ヌマさん、リョウさん、林太郎さんとで、広瀬川の河川敷の対岸のドラム缶でできた椅子のところでやっている。

正確には、そこは集合場所で、そばのロイホに移動する。たまに、そのドラム缶のところでバーベキューもしているけど。

大手文具メーカーをやめて親戚と住宅地開発の会社をじはじめたものの、実際にそれをはじめたらうまく販売できず行き詰っているひとや、職場で正社員じゃないゆえにパワハラを受けている女性など、働く関係の悩みを聞いている。

アツシは仙台でサイトをつくり、林太郎さんは紙媒体を手がけ、2人で新しいメディアをつくろうとしている。まだちっぽけなものだが、着実にできあがっている。リンちゃんの撮った写真などの取材が活きている。
アツシはあの洞窟をバーチャルな映像にしてそこでそこでみんながつながれたらいいなと思っている。
ヌマさんのやっていたカフェの建物の2階に「仙台らしさ研究所」の看板を掲げた。

(林太郎さんとアツシの会社予想図)

リョウさんはそのカネには手をつけなかった。結局、リンちゃんとキャバクラやホストクラブ相手に接客の指導をする仕事をはじめた。最初は一般の会社に向けて、コミュニケーションのセミナーとかをしていたが、企業が求めるものとの食い違いから、そちらにシフトした。企業で、声をだしたり、おじぎをしたり、カツゼツの訓練、傾聴などの講演をやっていたが、リョウさんのスキルを欲しがるキャバ嬢やホストを相手にしていたほうが楽しいらしい。最近では、もてない男への恋愛講座や、初老の男性向けにトータルなレベルアップのセミナーもやっている。

リョウさんとリンちゃんはカフェも買収した。そこで、「擬似恋愛」という名前の、酒を出さないキャバクラ(?)をはじめるらしい。手を握って「素直になろ」と言うところからはじめるとか言っていた。「オクラホマミキサー」を踊るみたいだとか、林太郎さんが言ってたけど、たぶんリョウさんがデキトーなこと言ったんだと思う。

コハルはショウタと風俗嬢のための、深夜に開くカフェをはじめた。「メリー」のデザインを起こした「ペコちゃん」をキャラクターに使っている。
洞窟にあったコハルの温もりはここにある。コハルはショウタと組んで強くなった感じがする。

リョウさんは、コハルの声で、萌えの自己啓発の音声を作った。
リョウさんが女子高生によるカウンセリングの店をやらないかとか言って来ているみたいだ。でも、コハルはショウタと裏で「仕置き人」をやっているとか、冗談かもしれないけど、そういう噂だ。悪いやつをやっつけるとか言っている。タカハシさんがよく来ていて「コォフィーなど」と言ってオーダーをすると言っていた。最近、某大学の教授が、自分の理論に合わないからと意地悪をして論文を通さないので精神的にまいっている学生が通っているとか、へんなストーカー被害の相談も多いとかいう話をしていた。まあ、概して男性には優しくないが、女性には手を差し伸べてくれるカフェだ。
コハル「シニヤガレ」

遠藤はその後どうなったのかはわからない。アツシが、仙台で歩いているのを見かけたが、それほどカネをもっているふうには見えなかったらしい。もう、彼は関係のない人物だ。

マイナスイオンの社長が、会社倒産後、デリヘルをはじめたことをショウタから聞いた。人妻のお店らしいが、ネットで検索してみるとそんなに評判はよくない。 現在仙台のデリヘルは飽和状態にあるようだ。新店舗の多くは既存店の新メニューラインのもので、最初から顧客の安定がみこまれている。
ラインは、女性のグレードの高いの(キャバ風が多い)、その下のライン(エコノミー)、素人路線(ロリ系)、ここに、人妻ライン、巨乳(ぽっちゃっり)があり同じ系列で同じ女性が複数にまたがって、ちがう価格帯の名前の店にも別な名前ででている。
10000円程度のところも10件ほどある。多くは高い価格帯の店名との併設だ。安いものの単体で長年営業しているところも1件あるがめずらしい。

安い店は、グレードの低い女性か、本番で楽に金がかぜげるということで、本番の比率が高い。かつての名店の中にも本番が蔓延しているところがあるという。逆にいうと、収穫できない店にその傾向があるという。
マイナスイオンの社長が、「提携なしで、新店舗が単体ではじめたのははなから失敗は目に見えているべやぁ」とリョウさんは言った。


タカハシさんはあいかわらず家電の修理を請け負って、あいかわらずフリマで拾ったものを売っている。
タカハシさんは県民住宅を出て、みんなで買った廃坑の空き地に、倉庫を建てて住んでいる。地下に穴を掘りすすんでいる。金を掘り当てようとしているのではなく、自分のフリマの在庫をストックする場所を地下に地下にとつくっているのだ。
外気温と地下の温度差でおこる結露の問題があるようで、温度は28度、湿度は50%に保つようエアコンがつけっぱなしだが、今度は水力発電気ではなく、ソーラーパネルを自作していた。ちなみに、三居沢の水力で電気をつくろうとしたあとの簡易発電機が三居沢の誰も訪れない銅像のわきに設置してある。

あの河川工事のパネルはまだ掲示してある。
緑色のスカーフをした女性がそれを見て、微笑して、メモをとった。

捜査官)
そのとき、取調室の外から、警官の声が聞こえた。
内容は夏のボーナスの金額のことだった。
ふと、それに呼応して、コハルがこの担当捜査官がコハルの事件を受け持ち加害者にはなにもしてくれずに、コハルに裁判で訴えたらいいでしょうの一点張りをしていた警官だと言ったことを林太郎さんは思い出した。
林太郎さん「あの、これって、なにか協力するとなにか僕にとってはメリットがあるんですか?」
警官「え?」警官は怪訝そうに、首をかしげた。
林太郎さん「たとえば、ほら、ちょっと前に宮城県で問題になった、捜査協力費とかそういうものとかあるんですか?」
警官「いや、それはないですよ」畳み掛けるように、警官は質問をしだした。
警官「まず、お名前と生年月日お願いできますか?」
高圧的な態度を感じて、林太郎さんは不愉快に思った。
林太郎さん「おや?ボク、あなたの名前も知りませんよ」
警官「わたしは、鈴木です」
林太郎さん「鈴木、下のお名前はなんですか?」
警官「いや、いいから。。。お願いしますよ、協力してください」
林太郎さん「ちょっと、待ってください。ボクあなたのこと知らないのに、生年月日とかも言わなきゃいけないんですか?」
困ったような顔をして警官は言った。
警官「いや、だんなさん。協力してくださいよ」
林太郎さん「あのぉ、なぜ『だんなさん』なんですか?旦那じゃないですよ」
警官「いや、…」警官は黙った。
林太郎さん「これ、任意ですよね。いいです。僕、忙しいから、帰ります」
警官「ちょっとちょっとぉ!」
警官は腕を掴もうとした。
林太郎さんはため息をついて、カバンの中からICレコーダを出して、録音をはじめた。
林太郎さん「いま、鈴木さん、えっと、認識番号は、、、認識番号はなんばんですか?」
警官「…」警官はだまった。
林太郎さん「帰ります。」

すんなりと帰れた。
それから、もう呼び出しはかからなかった。

林太郎さんの推測した、この事件の事情はこうだ。

指のない死体は長瀬だ。おそらく、漢が来た時に、なにかを聞き出すために拷問を受けている。漢が、「アルファ」の「クノッソス」で言っていた「ワタシは10回キクヨ」と言ったのは、おそらくこの意味なのだ。つまり、チャンスを10回与え、そのたびに、指を切り落とされる。漢が、「日本の指きりってのは約束のコトなの?」との質問への答えに笑い出したのはそういうことだと思う。
「日本の遊女、まあ、身体を売る女性ですけど」「風俗ね」「えええ、風俗の女性が、特定の客にあなただけと証明するために指を切り落として相手に与えるんです」
指のない死体にまだ7本まだあるということは、長瀬が左手の人差し指にハサミかなにかが当てられたときに「吐いた」という意味だ。
パチンコの玉はネットカフェで寝るときに、耳にパチンコ玉をつめると耳栓になると林太郎さんが教えたから所持していたのだろう。


遠藤は、おそらくヤマちゃんか、あるいは間島に無心に行ってカネのトラブルで殺されたのだ。せっぱつまった遠藤を遠ざけるには殺すしかなくなったということなのだ。郵政事件の逆恨みというものや、他の過去のトラブルかもしれないが、遠藤は金が欲しいと相手に過剰な攻撃をしかける。遠藤のひととなりを警察に伝えること自体が苦痛だ。「思い出」ではないから。

わざわざこの数年のことを警官に話しても、警官は書類を完璧につくりあげようととんでもなく時間をかける。捜査協力が国民の義務とか、あるのかもしれないが、警官がそうした刑事事件の捜査を、初期の「アルファ」の被害者の交番への駆け込みにも、コハルの事件にしてもそうだった「民事不介入」をたてに誠意をもって対応もしないのは絶対よくない。
一方で、OBのためにねずみとりにばかり一生懸命な姿を思い浮かべると警官の義務を果たしているのかどうかから問われるべきだ。


かくして、事件は終わった。いや、3つの死体についても、それが見つかった時には地元の新聞やテレビで取り上げられたが、他のバットで駐車場でなぐられた男性の事件や、山のなかのトイレで見つかった死体と同じく、話題ではなくなった。そのまま「捜査中」という付箋紙だけつけて埋もれていくのだろう。

いや、30代の死体が長瀬かどうかは興味はある。しかし、わざわざ、それを知ったところで、別にいい気持ちになるわけでもないし、中国の高官を親に持つ「漢」に対して、日本の警官が強気に捜査をできるとは到底思えない。下手にここで、漢の名前を出せば、警官が不用意にこちらの名前を漏らすなどしかねない。捜査協力が知れたときに被害がこちらの家族にまで及ぶだけだ。

こう言ってはなんだが、警察が初期の段階での「アルファ」への被害届けを真摯に受けていれば、アルファの被害はここまで膨らむはずはなかったのだ。

大きな事件で大変で、小さな事件には関わっているほど暇ではないのでもない。立町のラブホテル街を出てすぐのところの「シートベルトをしていないとりしまり」みたいな小さなねずみとりにばかり一生懸命な姿ばかりが、宮城県は目に付くのはなんなんだろう?
「アルファ」のある北海道も、ここ宮城県も、警官の捜査費の流用では問題になった2県だ。



そして、犯罪は今日もおこり、ぼくたちはどの事件がどうだったかさえも混乱するほど多発する事件のニュースの中にいる。

穴の中)
廃坑の土地に掘った穴の中。
タカハシさんが穴を掘っている。
=ボコリ=と音がして、穴がくずれタカハシさんは生き埋め状態になる。


しばらくすると土の中からはいだしてくる。
目の前に2つの穴がひろがっている。ひとつは掘り進んできた穴だ。
もうひとつを進んでいく、一部、舗装されている。
書類や木の箱やガラスのビンが置かれている。


そこに「第二師団 機密」の文字。
第二師団の文字の書類の下に、古い仙台の地図の束。 ほこりが積もっている。

林太郎さんの携帯が鳴る。
――――これはまた別な話だ――――
希望は求める限り、生まれ続ける。まだ、逃げたくはない。




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